神戸地方裁判所 事件番号不詳〔2〕 判決
主文
被告人を罰金八万円に処する。
右罰金を完納することができないときは金五百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は土木建築請負を目的とする合資会社飯田建設工業所の代表者であるが、
第一、昭和二十四年二月二十八日神戸市施行の楠ケ丘高等学校模様替工事の指名競争入札が行われるに際し、前記会社もその競争入札人に指名されたが、被告人は是非とも右工事を落札しようと考え、同月二十四日頃同じく右工事の競争入札人に指名されていた株式会社西口工務店(代表者西口光雄)、同安部組(代表者安部吉郎)、田中建設工業株式会社(代表者日高成治)及び合資会社柏木建設社(代表者柏木良)の四名に入札日の朝市役所で会いたい旨申し入れ、同月二十八日入札の直前神戸市役所内の神戸市建設工業組合事務所において前記各指名入札人に対し右工事を譲つて貰いたいと懇請し、いずれもその承諾を得た上自己の入札予定金額より高額の金額を指示してそれぞれの請負金額を入札書に記載して入札せしめ、被告人自らは若し右のような談合をしないで自由競争によるときは少くとも談合者に交付すべき談合金を控除した額で入札しうることを認識しながら右談合金一万五千円を含めて、自己の請負金額を六十一万五千円として入札し、同日開札の結果は同市の予定価格を超過したため再入札となり即日再入札の結果も再び市予定価格超過となつたが、結局再入札において最低額であつた被告人の会社が市との随意契約によつて右工事を請負うこととなり所期の目的を遂げた上、同日右談合の謝礼金として西口工務店に二千円、安部組に三千円、その他の二名には各五千円を交付し、もつて公の入札に関し公正な価格を害する目的で談合し、
第二、同年四月十五日神戸市施行の同市長田区役所新築工事の指名競争入札が行われるに際し、被告人の会社もその競争入札人に指名されたが、同月十二日頃同市兵庫区福原町所在神戸建設工業倶楽部において同工事の競争入札人に指名された業者の会合があり被告人も出席して同工事は長田区内の業者に譲ることに話合いが決り、更に同月十三日頃同市長田区五番町二丁目中根正秋方に被告人をはじめ長田区内の指名入札人が集つた際同工事は中山鶴松に落札させることとなつて、被告人も同人に落札させれば従来の慣例上謝礼として若干の談合金を入手しうべきことを予期しながらこれを承認し、翌日頃前記倶楽部で中山より同人の入札金額をきいてそれより高額に自己の請負金額を入札書に記入して入札し、同月十五日開札の結果予想通り中山鶴松に落札させた上同人から右談合の謝礼金二万円の交付を受け、もつて公の入札に関し不正の利益を得る目的で談合し、
第三、同年六月二十三日神戸市施行の重池市設浴場新築工事の指名競争入札が行われるに際し、被告人の会社もその競争入札人に指名され手持資材もあり落札したいと考えていたが、同月二十一日頃同市兵庫区菊水町六丁目小林敬二方で同じく右工事の競争入札人に指名されていた山田虎雄より是非譲つて貰いたいと頼まれて同人に右工事を譲ることを承諾し、同人が落札した場合には従来の慣例上若干の談合金を入手しうべきことを知りながら、被告人の会社の記名捺印はあるが入札金額欄は空白の侭の入札書を虎雄に交付して入札せしめ同月二十三日開札の結果は市予定価格を超過したため即日再入札となり再入札の結果もやはり市予定価格を超過したが最低額入札人であつた山田虎雄が市との随意契約により同工事を請負うこととなり所期の目的を遂げた上、同日同人より右談合の謝礼金二万五千円の交付を受け、もつて公の入札に関し不正の利益を得る目的で談合し、
第四、同年七月十八日神戸市施行の橘小学校復旧改修工事の指名競争入札が行われるに際し、被告人の会社もその競争入札人に指名されたが、被告人は是非とも右工事を落札しようと考え、同月十日頃より同じく同工事の競争入札人に指名されていた株式会社門田組(代表者門田義一)、同溝口組(代表者春日賢一郎)、同西口工務店(代表者西口光雄)、同吉田工務店(代表者吉田金次郎)、同大崎工務店(代表者大崎寛)、島田工務店(代表者島田政五郎)、長栄工業合資会社(代表者木下光雄)、吉田福治及び岡野元治の九名に対し、神戸市内の営業所に訪ねたり或いは同市役所附近で会つた際に前記工事を譲つて貰いたい旨懇請し、いずれもその承諾を得て、門田組、島田工務店及び吉田福治よりはそれぞれ記名捺印はあるが入札金額は被告人が自由に記入できるように空白の侭の入札書の交付を受けて自ら適宜入札金額を記入し、その他の業者に対しては同月十七日頃前記建設工業組合事務所において自己の入札予定金額より高額の入札金額を指示して各入札書に記入して入札せしめ、
被告人自らは自己が落札した際に分配すべき談合金を五万円とし、談合によらず自由競争により入札すれば少くともその談合金を控除した額で入札できることを十分認識しながら右談合金五万円を含めた百十四万円で入札し、同月十八日開札の結果予期の通り被告人の会社に落札し、同日右談合の謝礼金として前記吉田工務店には一万円、その他の八名には五千円宛を交付し、もつて公の入札に関し公正な価格を害する目的で談合し、
第五、同年六月下旬頃神戸市兵庫区下沢通一丁目喫茶店きよみにおいて、当時神戸市理財局用度課契約係長として同市施行の工事請負契約に関する事務を担当し、入札者の氏名、落札者の決定、落札者と市との工事請負契約の締結、工事請負人より提出する工事代金支払請求関係書類の精査、支払手続等の職務を行つていた同市書記大中明夫に対して、将来同市施行工事の指名入札に際しては自己を入札者として指名を受け又工事施行代金の支払いに便宜な取扱いを受けたいとの趣旨の下に、同人の東京出張の際の土産品購入代金名下に現金一万円を交付し、もつて同人の職務に関し賄賂を供与し、
たものである。
(証拠)(省略)
(法令の適用)
被告人の判示所為中第一乃至第四の入札談合の点は各刑法第九十六条ノ三第二項第一項罰金等臨時措置法第二条第一項第三条第一項に、第五の贈賄の点は刑法第百九十八条罰金等臨時措置法第二条第一項第三条第一項に各該当するところ各所定刑中罰金刑を選択し以上は刑法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十八条第二項により各罰金の合算額の範囲内で被告人を罰金八万円に処し、右罰金を完納することができないときは同法第十八条により金五百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置すべく、訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項により全部被告人に負担させるべきものである。
よつて主文の通り判決する。(昭和二八年一一月二八日神戸地方裁判所第三刑事部)